中村勘九郎と七之助、コロナ禍の巡業公演「お客様を前に胸に迫るものが…」「役者も人間ですから」

「錦秋特別公演2021」リモート取材会に応じる中村七之助

「春暁特別公演」で久しぶりに観客を前にした喜びを、勘九郎は「やっぱり嬉しかったです。こういう状況の中、わざわざ足を運んでくださる、見に来てくださることに感謝しかなかったです。自粛期間中にお客様でいっぱいの過去の映像を見て、いつこれを取り戻せるのか、これが夢にならなければいいなという思いでいた中で、巡業公演のお客様を前にした時は胸に迫るものがあった」、七之助も「どういう状況か分からないまま幕が開いたんですけど、あんなふうにお客様が入っているのは久しぶりだったので、役者も人間ですからいっぱいお客様が入っていたほうがうれしいんだなとつくづく思った」とかみしめた。

 初めて歌舞伎を見る人に対しても、あえて分かりやすい演出にはしないといい「歌舞伎だけではなく今、頭を使って見るものがすごく少なくなってきて、分かりやすいという方向性に行きがちになっている。よく分からない芝居なのに自然と涙が流れるような、本能というか内面の奥底を刺激する作品は歌舞伎にもたくさんありますし、踊りには台詞がないので伝わりづらいんですけど、分かりやすくせずに歌舞伎本来の演出や楽しさで見ていただけたら」と語る勘九郎に、七之助も「演目を決める時には初めて見るお客様のことを考えますが、どこへ行っても変わらずに私たちがやってきたことをお見せするのみだと思っています」と同調する。

 最後に勘九郎は「少しでも現実を忘れて、非現実の歌舞伎の世界に飛び込んでいただけたらうれしいです。来てくださったお客様の心の栄養になればいいなと思いますし、大雨被害に遭われた方がいらっしゃる土地にも伺いますので、歌舞伎によって癒すことができればいいなと思っております」、七之助は「こういう状況下で来てくださるお客様は、私たち役者にとりましては本当にありがたいのひと言です。来てくださったお客様お一人おひとりに満足していただいて、明日への希望につなげていただければ幸いですし、私たちもやる意味があるんじゃないかと思います」とメッセージを送った。

「中村勘九郎 中村七之助 錦秋特別公演2021」は10月5〜24日まで、全国15カ所にて公演。