1人で開発を始めNASAに認められた超小型探査車や驚きの高性能吸水サニタリーショーツ…世界に羽ばたく東京の中小企業を取材

 都内の中小企業が開発した製品や技術などを表彰する「東京都ベンチャー技術大賞」。10月19日に行われた表彰式では、15件が大賞はじめ各賞を受賞。小池百合子東京都知事も「いずれも卓 越した発想力、確かな技術力で生み出された、世界に誇る革新的な製品やサービス」と高く評価した。東京から世界に羽ばたく可能性に満ちた受賞企業の中から、4社に話を聞いた。

「東京都ベンチャー技術大賞」は都内で実質的に事業を営む中小企業や個人事業主を対象に、 商品化から5年未満の、革新的で将来性のある製品・技術を表彰するもの。今年は106件の応募 があり、その中から15件が大賞、優秀賞など各賞を受賞した。

【NASAのプロジェクトに参加決定! 超軽量小型で高強度な月面探査車YAOKI】

 栄えある大賞を受賞したのは、株式会社ダイモン(大田区)が開発した月面探査車「YAOKI」。 約0.5キロ以下、手のひらに乗るサイズという超軽量小型。さらに100メートル上空のドローンから落としても壊れない高強度。“七転び八起き”から名付けられたネーミングの通り、転んでもひっくり返っても走行可能なデザイン。すでにNASAの月輸送プログラムと契約し打ち上げを待つばかりという、東京から宇宙へ羽ばたく注目企業の受賞だ。

話:株式会社ダイモン CEO、CTO 中島紳一郎さん

「『YAOKI』は“七転び八起き”から名付けられた、転んでも倒れても走行可能な、超軽量小型、高強度な月面探査車です。上下対象に作られているので、ひっくり返っても走行できますし、横に倒れても車輪を動かしているうちに戻ります。非常に高強度で、月面の悪路に放り出されても駆動できるよう想定して設計しています。現在、月に居住スペースを作るなら洞窟内だろうとされていて、すでに洞窟もいくつか発見されています。『YAOKI』なら洞窟探検にも向いていると思っています。これが498グラム。月への輸送費は1キログラムで1億円かかるとされており、理論上は5000万円で行けます。

 現在、展開しているビジネスモデルは大きく3つ。1つは月面探査。これは『YAOKI』の開発を終えて、打ち上げの日程も決まっています。後は、ミッションに成功しさえすればビジネスは花開くと思っています。2つ目は地上用ロボットへの転用。具体的には、インフラ点検ロボットですね。小さいので、 配管点検ロボットですとか。また、悪路でも走行能力が高いので、ドローンと連携して、被災地などでも役に立つのではないかと考えています。そして教育面での活用。幅広い世代の一般の方 に、最新の宇宙技術を体験してもらう。すでに小学校などで子どもたちに実際に『YAOKI』に触ってもらい、操縦してもらったりもしています。子どもたちはひたすら操縦を楽しんでますが(笑)、本物の宇宙探査技術に触れ、宇宙開発は身近なものなんだと楽しみながら実感してもらうことができます。数年以内にたくさんの『YAOKI』を月に送り、操縦権を解放することも考えています。

 また、現在は2輪で手のひらサイズですが、実はもともと連携探査を念頭にしており、将来的には複数機が連携して走行できるようにするといったことも考えています。ドローンと連携すればさらに活用範囲は広がるでしょう。

 もともと私は自動車エンジニアをしており、3.11の日に思うところがあって独立を決意しました。10年前に起業し、受託設計の仕事などをしながら探査車の開発を続け、ようやく3年前に一旦、 開発が完了しました。今は6人いるのですが、1年ほど前まではずっと1人でやってきまして、長く孤独な開発作業でしたね。『YAOKI』の開発を終えた段階で、自分でプロモーションビデオを撮ってYouTubeにアップし、それをNASAの関係者に送ってみたところ、宇宙開発関係の2~3社から色よい返事があり“NASAでは今、月面探査のグローバル募集をしているから本当にやるなら 参加できると思う”と言われたことがきっかけで、NASAと契約することができたんです。まるで、ジャスティン・ビーバーに見出されたピコ太郎さんのようだと思いました(笑)。

 アメリカでは、良いものをどんどん大きくして性能を高めるという発想が主流という気がしますが、どんどん小さく軽く無駄を省くことで良いものを作るというのは日本の得意な発想だと思います。NASAのプロジェクトに参加する探査車のなかで『YAOKI』は最小最軽量だと言われましたし、その部分でも評価されたのではないかと思います。

 起業した当時は当然、月面探査車の開発で食べて行けるわけもなく、長く孤独な開発を続けてきましたが、いつか必要となる時代が来ることは分かっていました。そのときには自分が先駆者になれるかもしれない。リスクをかける価値はあると思っていました。

 今回の受賞は、私たちにとって大きく2つの意義があると感じています。1つは、月面探査が認められたということ。まだ現実のビジネスにはなりにくいという見方が大きいなかで、技術力だけでなく、ビジネスとしての可能性も評価され大賞を受賞したことは、とても意味があると思っています。そして、私のような、ずっと1人で開発してきたミニマムな会社でも最先端の分野に挑めるし、こうして評価していただくことができると示すことができたなら、うれしく思います。

 スポンサーも少しずつ決まってきたところですが、より広く多彩な企業の方に関心を持ってもらい、 NASAに認められた小さな月面探査車に一緒に乗っていただきたいですね」

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