1人で開発を始めNASAに認められた超小型探査車や驚きの高性能吸水サニタリーショーツ…世界に羽ばたく東京の中小企業を取材
【現役眼科医が開発! 眼科医の“眼”を世界に広げるスマホ装着型医療機器 】
激励賞を受賞したのは、現役の眼科医でもある清水映輔さんが開発した眼科の医療機器「Smart Eye Camera」。iPhoneのアタッチメントとして装着すれば、既存の細隙灯顕微鏡と同様に 眼科疾患の評価・診断ができ、場所を選ばずに眼科的診療を行うことが可能。そのデータを共有することで眼科専門医のリモート診断を受けることができ、へき地や在宅医療の眼科診療に変革 をもたらすと期待される。
話:株式会社OUI(新宿区)代表取締役・清水映輔さん
「開発のきっかけは、2017年10月、私が白内障の医療ボランティアで行ったベトナムで、眼科診療用の医療機器が無いためペンライトで眼の診察をしている現場を見て、スマホの光を眼科診療用に調整して使うことができればいいのに、と思いついたことが発端でした。
私自身が眼科医なので、その知見を生かし、ハードウエアとソフトウエアそれぞれの担当エンジニアとともにアタッチメントとソフトの開発を1年半近くかけて制作し、既存の細隙灯顕微鏡と同様に眼科疾患の診断を実現しています。ただ、Smart Eye Cameraはあくまで診断機器なので、治療ができる医師とのコラボが必要です。あるときは現場で使っていただいたり、共同研究をしたり、ともにビジネス展開をしたり、現地のニーズに合わせて新しい眼科診療のモデルを作っていきたいと思っています。
すでにインドネシアやブラジルのアマゾン地域、アフリカのモザンビークやケニアなどのへき地医療や眼科専門医が足りない地域で、医師やアイキャンプ(主に医療過疎地域で行う眼科診療ボランティア活動)活動団体と協働し、実際にSmart Eye Cameraを使ってもらい大きな反響をいただいています。例えばケニアでは、その地域で1人、2人しか眼科医がいないエリアもあって、わざわざ医師が患者に声がけしてアイキャンプに集めたりしているのですが、Smart Eye Cameraがあれば先生が行かなくてもナースやスタッフが患者さんのもとに行き、自分のスマホで診察したり患者さんのデータを撮ることができるので、現地の医師がより効率よく治療に専念でき るんです。
マラウィのとある医師からは“これはゲームチェンジャーになる”と言っていただきました。マラウィは人口300万人のうち眼科医が14人くらいしかおらず、年を取れば見えなくなるのは当たり前という感覚があって、治療可能な病気で失明してしまう人も多い。でも眼病による失明のうち、早期発見早期治療で失明を免れるケースは多いんです。Smart Eye Cameraがあれば、眼科医が足りない地域でも、現地の医師が遠隔で専門医からコンサルを受けることもできる。これはへき地だけでなく、日本の医療過疎地域や在宅医療などでも活用できると思っています。
すでに海外展開では確かなニーズがあることが分かっており、関心を持ってくれる政府や自治体も増え始めています。今回、東京都から贈られた賞ということで、さらに後押ししていただきながら、東京から世界へ、眼科診療を広げていきたいと思っています」