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新しい何かが始まる!『FROM DEEWEE』Soulwax

2017.03.27 Vol.687

 DJデュオ、2 Many DJsとしても活動するベルギー出身のロックバンド、ソウルワックスがオリジナルとしては12年ぶりに放つ最新作。90年代には“踊れるロック”曲、キャッチーな楽曲でシーンを夢中にさせていたが、2000年以降はDJの活動のほうが目立ちがちだったのは事実。その一方で溜りにたまっていたメンバーのバンドとして作品を発表したいという想いがさく裂しているのがこの作品だろう。リスペクトされる“ダンスロックバンド”として彼らは、本作で、2017年の踊れるロックをスマートに提示して見せる。たたずまいも含めて、やっぱりカッコいい。

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新しい何かが始まる!『Different Creatures』Circa Waves

2017.03.27 Vol.687

 英ロックバンド、サーカ・ウェーブスの最新アルバム。2013年にリヴァプールで結成されるとともにブレークを果たした彼らが鳴らすのは、UKロックが脈々と引き継がれている耳なじみの良いメロディーとポップネス、高揚感を煽るギターからなるロック。多ジャンルや電子音、ダンスビートにのったロックといった2000年代以降の傾向から、一歩踏み出した勇気のあるロック。ノスタルジックではなく、新しいものをどんどん取り入れるでもなく、奇をてらわずにロックする。その真っ当さに覚醒の感がある。サマソニで再来日。

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「僕も“意識高い系”だからわかるんです」古谷経衡

2017.03.26 Vol.687

 これまで、政治や社会、国際問題についての著書が多かった著者による新刊『「意識高い系」の研究』が好評だ。カフェでmacを広げ、流行のお店で食事をして、ブランド品を持ち歩く。グルメとオシャレでキラキラと輝き、仕事も順調…。そんな日常をSNSにアップする。そんな“意識高い系”を鋭く斬る!

「ひとつ言っておきますが、“意識高い人”は立派な人です(笑)。問題は“系”。これはもどきということですから」と古谷氏。

「“意識高い系”という言葉を世間に広めたのは、常見陽平さんの『意識高い系という病 ソーシャル時代にはびこるバカヤロー』という本。そこには言葉の意味と類別が書かれているので、“意識高い系”という言葉は大体正しく共通認識されていますが、それがなぜ発生したのかということまで踏み込まれていなかった。ですから、今回の僕の本では“意識高い系”が生まれた背景と、その気持ち悪さの正体を分析してみようと思いました」

 その根底には何がある?

「彼らは、実力を盛っているばかりか、それを人に見せびらかしているんです。それは人に承認されたいという欲求によるもので、強烈なコンプレックスがその人たちの中にある。自分を盛っているだけの人は“意識高い系”ではなく、ただのウソつきです(笑)。それをあの手この手で、写真に撮ってアップロードして、自慢するのが“意識高い系”。そこに非常に大きな闇が潜んでいると思っています」

 リア充との違いは?

「リア充な人は見せびらかしません。両者は対立の構造です。リア充は自明のことなので見せびらかす必要がない。そこには、これまで積み上げてきた時間の蓄積があり、そのおかげで余裕がある。そしてその余裕が洗練を生む。そこには、親から受け継いだ土地というものがあり…」

 興味深い分析はまだまだ続くが、文字数がなくなり…。“意識高い系”の本質を知りたい人はぜひ!

新しい何かが始まる!『HIT』三浦大知

2017.03.26 Vol.687

 三浦大知のキレのあるダンスと豊かな歌唱力に裏打ちされた息を飲むパフォーマンスに圧倒されっぱなしだ。三浦大知という稀有な才能をぎゅうぎゅうにできるだけ詰め込んでいて、最先端のサウンドを取り入れたダンスチューン、歌もじっくりと聞かせるミドルなど聞きごたえと“感じ応え”のある作品だが、彼のすべてが聞けるなんてことは到底言えない。それだけ彼が“持っている”ものは、とてつもない。圧倒されながら隅から隅まで聞きたい。『Cry & Fight』など全12曲。

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新しい何かが始まる!『THE JSB WORLD』三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE

2017.03.26 Vol.687

 国民的グループとして不動のポジションを築き上げた三代目 J Soul Brothersのデビューから現在に至るまでの軌跡を一挙収録したボリュームたっぷりのベスト盤。メンバーによれば三代目の新章の始まりを告げる作品にも位置づけられるそうで、よくあるこれまでの“まとめ”的な作品かと思って聞くと火傷する。熱量たっぷり運動量たっぷりで音源も映像からも彼らの勢いを感じずにはいられず、受け取るほうもまた聞くほどに気合が入ってくる。目と耳でまずは堪能して。自然と心はズキュンとやられる。

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時が経って感じ方が変わるものもあれば不変のものもある『Defiled−ディファイルド−』

2017.03.26 Vol.687

 2000年にアメリカ・ロサンゼルスで、刑事コロンボでおなじみのピーター・フォークとテレビで活躍していたジョン・アレキサンダーによって初演された濃密な二人芝居。

 図書館員の若い男が歴史ある図書館に立てこもる。理由はその図書館の目録カードが破棄され、コンピューターの検索システムに変わることへの抗議。男は建物を爆破するつもりなのだ。交渉にやってきたのはベテラン刑事。刑事は緊迫した空気の中、巧みな会話で心を開かせようとするが、男は拒絶。しかし会話の中で徐々に男の深層心理が明らかになり、2人の間には奇妙な感情が生まれてくる。果たして刑事の説得は成功するのだろうか…。

 タイトルのDefiledというのは「気高く、神聖なものが汚されること」という意味。2人の会話を聞くうちに、我々自身、時代に流され無意識のうちに多くのものを手放し、無自覚なままに物事の本質から目を背けてきたことに気づかされる。

 日本では2001年と2004年に大沢たかおと長塚京三によって上演され、強烈なイメージを残した。それから13年が経ち、今回は新キャストでの公演。

 社会情勢もモノの価値観も大きく変わり、受け取る側の意識も随分と変わったなかで、戸塚祥太と勝村政信がどんな作品に仕上げてくれるのか。

  東京公演の後は大阪(5月10?12日)、福岡(5月19?20日)でも上演される。

時が経って感じ方が変わるものもあれば不変のものもある かさなる視点—日本戯曲の力— Vol. 2『城塞』

2017.03.26 Vol.687

 新国立劇場ではシリーズ「かさなる視点?日本戯曲の力?」と銘打ち、今年3月から、昭和30年代に執筆された日本戯曲の3つの名作を30代の気鋭の演出家によって上演している。今回はその第2弾。安部公房の『城塞』を上村聡史が演出する。

 同作は戦後17年が経った1962年に書かれたもので、戦争によって富を築いたブルジョア階級の責任を問う安部公房の痛烈な視点が際立つ作品。

 舞台は敗戦から17年後のある富裕層の邸。そこに住む男、その父、男の妻、家に仕える従僕、そして男に雇われた若い女による不可思議な“ごっこ”が繰り広げられていた。彼らは敗戦の記憶を持ちながらそれぞれの立場からの利己的な主張をぶつけ合うのだが、それによって、彼らのバランスが危うい状況へと変化していくのだった。

 ここで語られる特権階級意識や戦争観、愛国心といったものが過去のものととらえられるのか、もしくは身近な感覚としてとらえられるのか…。見る者の“感度”が試されることになる。

 ちなみにこの「かさなる視点?日本戯曲の力?」では3月に谷賢一が三島由紀夫の『白蟻の巣』(公演は終了)、5月には小川絵梨子が田中千禾夫の『マリアの首 ?幻に長崎を想う曲?』を演出。5月13日には3人の演出家と同劇場の芸術監督を務める宮田慶子氏によるシリーズを振り返るトークセッションを新国立劇場にて開催する。

劇団Rexy第4回公演は人気BLコミックが原作

2017.03.23 Vol.686

 

 女性向けのアダルトコンテンツに出演するイケメン俳優「エロメン」たちを中心に結成された劇団Rexyの第4回公演『晴れときどきわかば荘』の上演が23日から始まった。

 本作は羽生山へび子原作の人気BLコミックが原作。

 物語の舞台となるのは女装ママが管理するアパート「わかば荘」の前でママが経営する小料理屋「わかば」。このわかば荘の住人たちは、夢をあきらめていたり、借金取りに追われていたりと、ちょっと癖のある男たちばかり。ある日、そこに入居希望のリーゼントの男子高校生がやってくる。彼は実は同級生の男子高校生に恋をしているのだった…。

 この男子高校生ばかりではなく、昔の友達、先輩後輩など至るところで繰り広げられるイケメンたちのボーイズラブは必見もの。

 とはいえそればかりではなく、同性ゆえのすれ違いや思い込みといった感情の揺れを描きながらも、カラッとしたラブコメディーに仕上がっている。

 出演は有馬芳彦、井深克彦、北野翔太、鶏冠井孝介、深澤恒太、矢島八雲、金子直弘、浅井陽登、松原隆司、染川祐一郎、島津健太郎。

 26日まで、渋谷のDDD青山クロスシアターで上演している。公演の詳細は劇団Rexyホームページ(http://rexy.tokyo/)で。

治るはずのないがんは、なぜ消滅したのか—『がん消滅の罠 完全寛解の謎』

2017.03.16 Vol.686

 2017年第15回の「このミステリーがすごい!」大賞の大賞受賞作は、医療本格ミステリー。日本がんセンター呼吸器内科の医師・夏目は、余命半年の宣告をした肺腺がん患者の病巣がきれいに消えていることに衝撃を受ける。実は他にも、生命保険会社に勤務する友人から、夏目が余命宣告をしたがん患者が、リビングニーズ特約で生前給付金を受け取った後にも生存し、そればかりかがんが寛解するという事が立て続けに起こっているという事を聞く。偶然にはありえない確率で起きているがん消滅の謎を、同僚の羽鳥と共に解明すべく調査を開始。一方、セレブ御用達の病院、湾岸医療センター。ここはがんの超・早期発見、治療する病院として、お金持ちや社会的地位の高い人に人気の病院。この病院のウリは、万が一がんが再発・転移した場合も、特別な治療でがんを完全寛解させることができるということ。果たしてそれはそこでしか受けられない最新の治療なのか?!

 がん消滅の謎を追究するうちに、夏目はこの湾岸医療センターにたどり着いた。その病院には、理由も告げずに日本がんセンターを去った恩師・西條が理事長として務めていることが分かり動揺する夏目。一体、そこではどのような治療が行われ、がん患者はどのような経過をたどっているのか。また、自分の病院で起きているがん消滅の謎との関係性は。専門用語が出てくる医療物は苦手な人もいると思うが、同書は非常に分かりやすく、ミステリーとして単純に楽しめる。果たしてそのトリックが可能なものなのかどうかは、判断できないものの、非常に興味深く読め、国立がん研究センターにいたという著者の知識が存分に生かされた大胆なストーリーに驚かされる。

スゴイ“パイセン”たち『Hot Thoughts』SPOON

2017.03.16 Vol.686

 米バンド、スプーンが最新作をリリース。96年にデビューしてから着実に作品を発表し結果も残してきた彼らは、まさにUSインディの雄といわれる存在だ。そんな彼らが名門マタドールからリリースする最新作は、ミステリアスだけれども、熱があって、とても意欲的だ。プロデューサーにディヴ・フリッドマンを迎え、アコースティック・ギターのサウンドをとりあえず横に置き、バンドはまた新しい扉を開けている。とはいえ、“スプーンらしさ”はしっかりと残っていてファンを小躍りさせ続けることは必至だ。独特な世界観にぐっと引き込まれる作品。

スゴイ“パイセン”たち『All Time Best Album THE FIGHTING MAN』エレファントカシマシ

2017.03.15 Vol.686

 デビュー30周年!!を迎えたロックバンド、エレファントカシマシがキャリア史上初となるオールタイムベストアルバムをリリース。代表曲のひとつである『今宵の月のように』を筆頭に、デビューシングル『悲しみの果て』、毎年毎年桜ソングと呼ばれる楽曲が生まれていたタイミングで発表し世の中をピリッとさせた『桜の花、舞い上がる道を』、コンサートの定番『ファイティングマン』も収録。30周年に合わせて収録曲は30曲。そして価格は3000円という、ちょっとオドロキのベスト盤なのだ。

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