東京国際映画祭観客賞の大九監督、映画界のジェンダー格差やハラスメント問題を提起

©2020 TIFF
 第33回東京国際映画祭・観客賞受賞者記者会見が9日、映画祭クロージングセレモニー後に行われ、受賞作『私をくいとめて』(12月18日公開)の大九明子監督と主演のんが登壇。大九監督は受賞の喜びを語りつつ、記者からの質問に答える形で、女性スタッフの少なさやハラスメントなど、映画界における問題に言及した。

 冒頭、大九監督は「海外の映画祭の多くがリモートや配信などで行うなか、フィジカルに開催した東京国際映画祭に敬意を表します」と話し、同映画祭史上初となる2度目の観客賞受賞を喜んだ。

 新型コロナウイルス影響により撮影が一時中断したことも明かし、「不要不急という言葉が広まりましたが、映画は不要ではないと信じたい」と映画の未来に期待を寄せた大九監督。

 今年の映画祭公式上映作品における女性監督作品の比率(男女共同監督作含む)16.7%という数字からもうかがえるとおり、映画製作の場における女性の少なさについて質問されると「私の現場は女性が多いと言われるたびに、地球上のバランスに比べればまだまだですと返してきた。5年くらい前までは、今回は女性の監督にお願いしたかったので大九さんに、と言われることがあり、女であるだけで個性のように言われるなんて有利だとも思ったが、だんだん腹が立ってきまして(笑)。男性の監督にそれを言いますか?と思うようになった」と振り返った。

 そして「女性であることの不公平さを感じるたびに、私を導いてくれた大事な人はすべて女性だった。なので私はこれからも、女性の後輩には優しくたまに厳しく、道を照らしていきたい」と話した。最後に大九監督は「映画は楽しく安全な場所であるべき。ミニシアターに限らず映画界全般、生き延びていかなくちゃと思っている中で、悲しいハラスメントもあるということから目を背けてはいけないと思う。武闘派などという言葉でハラスメントが横行するようなことは、くいとめなければならない。映画がすべての人に救いとなるよう、これからも頑張りたい」と、さまざまな課題を掲げながら今後への意欲を語った。