堀潤氏が主宰する「8bitNews」が支援が遅れ被害が広がるばかりのシリアからの声を届ける「政治が人道支援を妨げている」

甚大な被害を被ったシリア(写真:ロイター/アフロ)

 地震のあったシリア北西部についてはシリア中央政権は支配できていないため、これまで空爆を繰り返してきたという歴史がある。ナジーブ氏は「あまり地震の影響がなかったシリア東北部を支配しているクルド勢力から人道支援が送られたのだが、トルコの言いなりになっている北西部の武装勢力がそれを止めて、入れさせなかった。同じシリア人からの支援なのに“それはクルドのプロパガンダにつながる”というくだらない理由で、市民たちが支援を待っているのに入れなかった」などとシリア国内の複雑な民族対立、政治対立、宗教対立も人道支援が遅れる一つの理由になっていることを説明。

「シリア北西部は今まではトルコがライフライン。国境を越えるのに国連の許可、決議が必要だが、数年前からロシアが安保理で拒否権を使って入り口を防いでいって、結局1つだけになった。地震が起きてから4日間で入った国連の支援は、以前から決まっていた支援が予定通りに入っただけ。こんな大きな被災のなかで、全然足りない。通常の時に必要な支援が入っただけ」と続けた。

 インタビューでは現地で取材を続けるシリア人ジャーナリストのムハンマド氏による写真も何枚か差し込まれた。ナジーブ氏はそういった写真を示しながら「イドリブは10年以上空爆を受けていて、建物もボロボロ。ビニールで壁や屋根を作ったりしている。そんな地域に政権の空爆から逃げて200万人くらいが入ってきている。イドリブという町は普段はシリアの中では穏やかな田舎。小さな町があちこちにあり、緑にあふれた場所。なのに今は人口が密集して、難民はテントに住み、町の人は半分壊れた建物に住んでいた。そんな状況で地震があった。皮肉なことにテントに住んでいる人のほうがラッキーだった。建物に住んでいた人の中で逃げられた人たちはテントに逃げた。地震はこの冬で一番寒かった夜、一番雨が激しかった夜に起きた。オロンテス川もあふれ、テントも移動しなければならなかった。悲惨な状況」、「がれきの下に多くの遺体があるが洪水で水に浸かってしまい、遺体の腐敗が進んでいて、病気が発症しやすくなっている。シリアからなくなって30年経っているはずのコレラが発症している。インフラの破壊、遺体の腐敗、洪水と全部重なってしまい、衛生面の対応がすごく必要になっている」などと訴えた。