別所哲也の映画祭マネジメント術 3.11、リーマンショック、コロナも乗り越え27年目

撮影・上岸卓史

9.11、東日本大震災、コロナ…危機を乗り越えてショートフィルムで“今”を映す

 映画を見たい観客、作品を発表したいクリエイター、メッセージを伝えたいスポンサー、三者をつなぐ場を作り続けて四半世紀。その間、9.11世界同時多発テロや東日本大震災、新型コロナウイルスのパンデミックといった困難も乗り越えてきた。

「映画祭を立ち上げて3年目、2001年にアメリカで同時多発テロが発生したときには世界的に飛行機での移動を控える動きになり、来日クリエイターとの調整など国際映画祭としても対応を迫られました。その後のリーマンショックでもスポンサー企業に影響が出ましたし、2011年3月に東日本大震災が発生したときには、6月開催の映画祭をどうするか我々の中でも議論を重ね、最終的に復興支援にもつなげるべく予定通り6月の開催に踏み切りました。近年ではコロナですね。人々が意図的に繋がれなくなり、海外でも中止を決断した映画祭も少なくありませんでしたが、我々は6月の開催を10月にずらし、オンラインを活用しながら開催することができました。結果的に、コロナを機にオンライン会場が定着し現在もリアル会場と合わせて多くの方に楽しんでいただいています。観客をはじめ、国内外の映画人やスポンサー、映画祭の大ファンでいてくれるボランティアの方々ともつながれるリアル会場と、現地に来ることができない人や気軽にスキマ時間で世界のショートフィルムを見たい人ともつながれるオンライン会場、どちらも重要な場となっています。僕は常々“人間には祭りが必要だ”と思っています。この27年、映画祭という祭りの場を続けてこれたのは多くの方のご協力あってのこと。本当に感謝しています。同時に、そんな時代の変化をいち早く描いてきたショートフィルムの“時代を映す力”も改めて実感しましたね」