通信障害、虫、地下鉄ストップ…さまざまなトラブルを乗り越えた「大阪・関西万博」終了まであと1カ月

その後も各国のパビリオンの工事費未払い問題が発覚するなどネガティブな話題もあったが、7月19日に唯一残っていたネパール館がオープン。開幕98日目にしてすべてのパビリオンが出そろった。
また万博といえば、会場内は禁煙のうえ喫煙所が用意されず、喫煙者は東ゲート外にある東ゲート施設東棟と西棟まで出向かなければ喫煙ができなかった。ところが関係者が隠れてたばこを吸うケースが発覚したことや、かねてからあった入場者からの「喫煙所が遠くて不便」という言葉に応える形で6月28日から会場内のリング北側と、EXPOメッセの南側に喫煙所を新たに設けた。
この判断については通信障害の際に移動型基地局を用意したのと同様、柔軟な判断ではあったのだが、いかんせん急な設置ということもあり、ボックス型ではなく外側を壁で囲っただけのいわゆる「青空喫煙所」。これでは猛暑の炎天下の中、喫煙する者にとっては酷な環境だと言える。加えて、国際的な催しであり、来場者や各国パビリオン関係者には多くの外国人が含まれている。屋外喫煙が一般的な彼らにとっても当初の会場内全面禁煙は不便であったはずだ。そもそも多様性を訴えるなら、もう少し喫煙者に対しても配慮した喫煙所の設置や情報の共有といった基本的なことは今後のイベント会場などでも求められるべきではないか。
そして万博中の極めつけのエピソードといえば、やはり8月13日に大阪メトロ中央線が電気系統のトラブルにより、21時30分から全線で運転を見合わせ、翌日の5時25分まで運転を再開できなかったことか。一時は来場者、スタッフや関係者を含む、約3万人が帰宅困難者に。結局、約1万1000人が翌朝まで会場内にとどまることとなったのだが、各パビリオンが万博協会の要請、もしくは自発的な判断で施設を開放し、帰宅困難者を収容。猛暑の中ということもあり、36人が頭痛や体のしびれなどを訴えて救急搬送されたが、大きな被害もなく事なきを得た格好となった。
ここで挙げたさまざまなトラブルに対し、運営側は迅速に対応したものの、よく考えるとどれも事前に察知できたものでもある。地下鉄の問題は一見、万博側は被害者にも見えるが、シャトルバス専用の西ゲートは稼働しており、そこにバスやタクシーといった車両を集めるといった策もあったはず。今回の万博は今後、大規模イベントを開催する際の大きな教訓となったのではないだろうか。