2024年ノーベル平和賞受賞の日本被団協の田中聰司氏と濱住治郎氏が講演で日本政府に核兵器禁止条約への署名・批准を要望。核抑止論の問題点も指摘

こちらの写真は今年3月の核兵器禁止条約 第3回締約国会議ハイレベルセッションで講演を行う濱住氏(写真:ZUMA Press/アフロ)

 濱住氏は胎内被爆した79歳で「一番若い被爆者」とのこと。濱住氏も自身や親族などの体験を紹介したうえで「戦後80年と言われているが、私にはまだ戦争は終わっていない。なぜなら世界にはいまだに4000発の核兵器があり、いつでも発射される状況にあるから。被爆者は核兵器がゼロにならなければ安心できない。母親のお腹で原爆を浴びた若い細胞にとって、放射線の影響は計り知れないものがある。胎内被爆者は生まれる前から被爆者という烙印が押されていると言われている。原爆は本人の未来を奪い、家族を苦しめる悪魔の兵器。それは今も続いている現実」と被爆者としての率直な意見を述べた。

 被団協は原爆被害者への国家補償の要求と核兵器廃絶を掲げて運動を続けているのだが、濱住氏は「どちらとも道半ばですが私たちは諦めません」と語った。

 また濱住氏も核兵器禁止条約について「被爆者にとって原爆投下から76年にして、初めて実現した悲願の条約。核兵器がいかなる意味でも違法だとした国際法が実現したことは大きな喜びだった」と2017年7月7日に国際連合総会で採択され、2021年1月22日に発効した核兵器禁止条約を評価しつつも「核保有国や同盟国が参加していない。日本政府も国の安全保障をアメリカに委ね、署名・批准していない。核保有国や同盟国は核抑止論に固執しているが、核兵器の保有と使用を前提とする核抑止論ではなく、核兵器は一発たりとも持ってはいけないというのは被爆者の願い。私たちは核兵器禁止条約を国民に理解していただけるよう、また日本政府を含め、署名・批准する国が増えていくよう普遍化に努め、さらに核兵器廃絶の国際条約の策定を願っています」と現状を憂いた。「人間が核兵器を否定しなければ、核兵器が人間を否定することになる。人類が核兵器で自滅することがないように、核兵器も戦争もない世界を目指して共に頑張りたい」とも語った。