係争中の映画『開戦前夜』原告らの拡声器演説行動でプレミア上映会を中止 公開日に変更なし
映画『開戦前夜』の製作委員会が、当初、7月19日に都内で行われる予定だったプレミア上映会を「イベント運営上の都合により中止する」と発表した。なお7月31日の公開に変更はないとしている。
本作は、実在した「総力戦研究所」と日米開戦への流れを描いた猪瀬直樹氏のノンフィクション「昭和16年夏の敗戦」を原案として創作された、NHKスペシャル「シミュレーション~昭和16年夏の敗戦~」のドラマパートの映画化。(映画イントロダクションより:1941(昭和16)年4月。真珠湾攻撃の8か月前。対米戦をシミュレーションするために日本中の若きエリートたちが集められた「総力戦研究所」。彼らがデータから導き出したのは、アメリカに対する「圧倒的な敗北」という衝撃の結果だった。原爆投下以外のほぼすべてを的中させていた彼らの見解は、採用されることなく日本は戦いへと突き進んでいった。それは一体なぜなのか?国を灰燼に帰した「空気」の正体とは?80年以上前の物語が、いま、あなたの理性を揺さぶる。)
ドラマ版は現在、裁判において係争中。原告側は、劇中に登場する「板倉大道少将」が、原告の祖父である当時の所長と同一人物であることを前提とし、板倉大道の描写が実在の所長とは異なっており、これが原告の敬愛追慕の情を侵害するとともに、歴史の捏造・歪曲にあたると主張している。
今回、7月19日に開催する予定だったプレミア上映会の中止について、製作委員会は「本作ドラマ版については、現在、裁判手続が進行しています。そのため、製作委員会としては司法の場で決着がなされると想定していたところ、7月14日、本作の試写会会場入口付近の公道において、上記訴訟の原告ら数名から、拡声器を用いて、本作ドラマ版及び映画版を批判する演説やビラ配布等が行われました。これを受け、7月19日に予定されていたプレミア上映会でも同様の事態が生じた場合に、お客様や登壇者、映画館その他の関係者に対してご迷惑をおかけする可能性を考慮し、やむなく同上映会を中止することにいたしました」とし「製作委員会は、本作に公開を差し止めるべき違法な権利侵害はないと考えており、予定どおり、2026年7月31日の公開に向けて準備を進めてまいります」と表明。なおプレミア上映会には、石井裕也監督とキャストの池松壮亮、仲野太賀、中村蒼、佐藤隆太、江口洋介、佐藤浩市が登壇する予定だった。
また、映画公式サイトにおいても声明文「映画『開戦前夜』の公開にあたって」を掲載。
本作は、歴史的事実に着想を得たフィクションであり、総力戦研究所での研究内容や開戦への流れは、複数の専門家による時代考証と数々の取材に基づいて検討を重ね、歴史的事実を追ったものであること、そのうえで、ドラマに架空の名前で登場する人物には特定のモデルは存在せず、ドラマ・映画でもその旨を明示しており、BPO放送倫理検証委員会にも「視聴者において誤解が生じることはない」と確認していることなどを説明。
「特定の個人を糾弾したり、名誉を毀損したりする意図は全くない」とし「原告の一方的な主張に基づき公開を中止することは、歴史的事実や実在の組織・事件を題材とする表現活動に重大な萎縮をもたらしかねません。これまで当たり前のように見られてきた歴史ドラマ、社会派作品、実在の出来事に着想を得た映画やドラマを、観客の皆さまに届けること自体が難しくなるおそれがあります」としている。

