「ハリウッド・スターは、なぜ来日しなくなったのだろう?」映画評論家が考察
来日が減った理由を考えてみる…日本をスルーして韓国へ?
しかし、ここ10年ほどはハリウッド・スターの来日もめっきり減ってしまった。その原因を考えてみると、まず市場の変化。観客の嗜好が洋画(海外映画)よりも邦画(日本映画)に移行し、大ヒットするハリウッド映画が少なくなってしまった。この傾向は2010年代から徐々に始まっていたが、その後2019年にCOVIDパンデミックが起こり、さらに2023年にハリウッドの脚本家組合と俳優組合のストライキが行われ、ハリウッド映画の製作本数が激減し(2019年の北米での映画公開本数は792本、2025年は602本)、洋画離れという現象は一気に加速した感がある。Netflixなどの配信会社が台頭し、映画以外のコンテンツが増加、YouTubeを含めたソーシャルメディア(SNS)が登場したことも理由の一つだろう。日本人が夢中になるような新たなハリウッド・スターがほとんど出てこないことも原因の一つかもしれない。これは映画だけの問題ではなく、海外そのものに興味が薄れていることにも関係があるのかもしれない。
今やハリウッドにとってアジアで日本以上に大きな市場として重要視されているのが、韓国だ。スターや有名監督たちが、新作のプロモーションで日本はスルーして韓国には訪れるというケースが近年増加している。最近では、『オデュッセイア』(26)の監督クリストファー・ノーランと妻でプロデューサーのエマ・トーマス、主演マット・デイモン、シャーリーズ・セロンが公開前に訪韓。その甲斐もあってか『オデュッセイア』は韓国でメガヒットを記録し、動員は現時点で1200万人を超えている(韓国の歴代累計興行収入で19位)。特にIMAXが人気で、アジア最大のIMAXスクリーンを持つCGV龍山では連日チケットがソールドアウトになり、入場券の転売が横行したため、法改正が行われるという事態にまで発展した。韓国にはアジア最大の映画祭、釜山国際映画祭があり、ジャンル映画に特化したプチョン国際ファンタスティック映画祭や、インディペンデント映画にフォーカスした全州国際映画祭も、毎年若者を中心に多くの観客が詰めかけ常に大盛況だ。
日本でもかつて、東京国際映画祭にレオナルド・ディカプリオやブラッド・ピット、トム・クルーズといった大スターが登壇することもあった。今月開幕する第39回東京国際映画祭には、ケイト・ブランシェットや、クロージング作品『コロニー/群体』(26)の監督ヨン・サンホと主演ク・ギョファンが参加することが決まっている。今後も新たな海外ゲストがアナウンスされるだろう。
北米の今年の映画興行は大盛況で、最終的な年間興行収入はパンデミック前の数字(100億ドルから110億ドル)に戻ることが確実視されている(12月には『アベンジャーズ /ドゥームズデイ』と『デューン 砂の惑星 PART 3』という超大作2本の公開が控えている)。こうなるとアメリカで劇場映画の製作本数も増えるはずなので、今後多くのハリウッド映画を含めた洋画が日本でもしっかり公開され、海外の映画に興味を持つ人が増加し、多くのハリウッド・スターが来日することを切に願う。
(文・小林真里)
『ターミネーター』シリーズなどで度々来日していたアーノルド・シュワルツェネッガー/『スパイダー/少年は蜘蛛にキスをする』デヴィッド・クローネンバーグ監督(2003年)/『キリング・ミー・ソフトリー』ヘザー・グラハム(2002年)/『007/ダイ・アナザー・デイ』ハル・ベリー、ロザムンド・パイク、リー・タマホリ監督(2003年)/(筆者撮影)





