引きこもり経験者や高校生…“起業家のタマゴ”たちが事業アイデアを熱血プレゼン!



 起業家育成プログラム「TOKYO-DOCAN(トーキョードカン)」の最終プレゼンテーションが10日、丸の内にある東京都の創業支援施設「Startup Hub Tokyo(スタートアップ ハブ トウキョウ)」(以下:スタハ)にて行われ、中高生4人を含む幅広い年齢層の第6期受講者21人が各自の事業アイデアのピッチ(簡易的なプレゼンテーション)を行った。

「TOKYO-DOCAN」は、スタハが実施している起業を目指す人を対象とした起業家育成プログラム。マサチューセッツ工科大学の起業家育成プログラムのメソッドに基づいた、全7回のフィールドワークや講義を通して、事業アイデアの創出から事業化までを体験できる。



 約2カ月間にわたり事業アイデアをブラッシュアップさせてきた受講者たちはこの日、アイデアの背景やどんな人を対象とした事業なのか、どうマネタイズするかといったプランを説明しながら、持ち時間3分の中で自分の事業アイデアをアピール。熱いピッチが繰り広げられるも、講評を担当する鈴木規文氏(株式会社ゼロワンブースター 代表取締役 CEO)が「同種の既存のサービスとの差別化は」「その事業の提供価値は何か」「実際にその有料サービスを使ってもらえる根拠は」など、その一つひとつに鋭い指摘や質問を投げかける。

 個人商店や町工場が点在するエリアに住んでいるという砂越陽介さんは「この地区に、工房やレクチャースペースとして利用できるシェアスタジオを作り、後継者不足や学びの機会を持てない地域の商工者に学びや交流の場などを提供し、地域の活性化につなげたい」とプレゼン。鈴木氏は「極めて正しい視点だが、同様のシェアスペースは山ほどある。なぜそのエリアなのかな」と質問し砂越さんから「この地区はこういうことをやっている人がいないので自分が手をあげないといけないかと思っています」との答えに「とてもよいアイデア案だと思います」と評価した。



 また「かつてブラック企業で働いたストレスにより引きこもりを経験した」という橘木良祐さんは「現在、日本では引きこもりが100万人、しかし支援機関に継続して通う人は6割ほどと言われている。私自身の引きこもり経験をふまえ、引きこもり版のリアル脱出ゲームを作りたい。リアル脱出ゲームは役割分担や共同作業などが必要。引きこもりの人同士がゲームを通して、共働経験やリアルなつながり、達成感を得ることができる。また、挨拶の練習といったシンプルなコミュニケーショントレーニングより面白いので、支援機関においてトレーニングの実践プログラムとして採用してもらえればと考えている。今後の展望として、ゲーム参加者に運営にも参加していってもらうなどして、引きこもり問題を引きこもりの人自身が解決するサイトを作りたい」と熱くプレゼン。鈴木氏は「やっちゃえばいいじゃないですか。お金がそこまでかからないのだから、こういうものはすぐ始めてみるといいです」と背中を押した。



 高校生の美並涼花さんは「妊婦さんとママさん限定のタクシーサービスを考えました。ターゲットが限定されているので、タクシーの中で利用者にサンプルを体験してもらうなど、メリットを感じてもらえる企業にアイデアを提案したい」とプレゼン。鈴木氏も「とても良くまとまっていると思います。ただ日本に今足りないのはアイデアを出す人よりも実行する人。いつか自分で事業化できるよう今後もいろいろなことを学んでいってください」と若い起業家のタマゴにエールを送った。

講評は株式会社ゼロワンブースター代表の鈴木規文氏

 最後に鈴木氏は「皆さん、とても上手なピッチでしたが、提供価値が前に出すぎているようにも思います。そうではなくマーケットが何を欲しがっているかが重要。自分の“やりたいこと”や“できること”ではなく“続けられること”が重要。起業準備を続けているとつらい時が必ずある。それを乗り越えるために夢中になれるものを探してください」とアドバイスした。

 10代から40代まで幅広い年齢層が参加した「TOKYO-DOCAN」第6期生はこの日の最終ピッチを持ってプログラムを卒業。第7期は今春よりスタハにて開講する予定。