【今月の“人”】緒方貞子さん(元国連難民高等弁務官)

2000年10月17日にタイの難民キャンプでミャンマーの若い難民家族と話をする緒方さん(写真:ロイター/アフロ)
 日本人として、また女性として初の国連難民高等弁務官を務め、難民支援に貢献した国際協力機構(JICA)元理事長の緒方貞子(おがた・さだこ)さんが死去した。92歳。東京都出身。

 緒方さんは昭和2(1927)年生まれ。曽祖父は犬養毅元首相、祖父は芳沢謙吉元外相。外交官の家庭に育ち、米国、中国、香港などで幼少期を過ごした。4歳のとき、五・一五事件で曽祖父を亡くした。

 1976年、女性初の国連日本政府代表部公使に起用され、上智大教授や国連人権委員会の日本政府代表などを歴任した。
 1991年1月、第8代国連難民高等弁務官に就任。2000年末までの任期中に、イラク・クルド難民の大量流出、ボスニア紛争、ルワンダ難民問題などに対応した。高等弁務官事務所の財政再建にも取り組んだ。

 退任後、アフガニスタン復興支援政府代表を務め、2003年に新たに発足したJICAの初代理事長に就任。約8年半の在任中、アフガンや南スーダンなど途上国支援に尽力した。

 緒方さんは日本人女性の国際社会進出の先駆け的存在。UNHCR時代の部下で、緒方さんを「仕事上の師」と仰ぐ国連軍縮担当上級代表(事務次長)の中満泉さんは、「いつも難民の人たちの利益を第一に考えている信念の方だった。私だけでなくて国連には、緒方さんから影響を受けた人がたくさんいて、みんな尊敬している。大きい人です」と語った。