スマホアプリで心のバリアフリー。「出かける勇気と楽しさ」感じて

ビジネスコンテスト「Startup Stage 2019」ではヘッドライン賞を受賞した友枝さん
勇気とほっこりで、社会を変える

 昨年2月、東京都の「ソフトバリアフリー実証実験」に採択されて以降、10月には東京モーターショー「Future Expo」への出展、12月には起業を支援するStartupHubTokyoのビジネスコンテスト「Startup Stage 2019」でヘッドライン賞を受賞するなど、これまで着実に実績を重ねてきた。一方で、事業性の観点から、参画していた大企業の撤退に直面するなど、収益化への課題もある。だが、友枝さんの表情は晴れやかだ。「かつて車椅子で電車に乗ることが珍しかった時代がありました。でも今は違います。心のバリアフリーも同様です」と、覚悟を滲ませる。

 袖縁が描く未来はシンプルだ。「世界には、“障害者”と“これから障害者になる人”の2種類の人間がいる」と友枝さん。いずれ誰もが年齢を重ねて身体機能が衰える中、合理的配慮は決して特別なことではなく、むしろ自分ごとなのだという。同僚の相談から5年半、人のためのアプリ開発が、実は自分のためになっている事に気づいた友枝さんは、今後そうした気づきを多くの人に知ってもらおうと、大学の研究所や介助団体とコンソーシアムを作り、意見交換の場や街づくりにも関わるという。

 「障害者やマイノリティーが過ごしやすい社会は、自分の老後や怪我の時の安心につながると思うんです。誰もが居心地の悪さや疎外感を抱えることがないように、温かな世界を今から作っていきたいです」と友枝さん。サイバーな縁が紡ぐ勇気とほっこりは、私たちの行動や社会の認識も変えてくれるかもしれない。
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