「特集 岩井秀人」が2カ月連続で日本映画専門チャンネルで放映。 今年7月に開催された「なむはむだはむ」初の音楽ライブもテレビ初放送!

『なむはむ!ドキュメント ~俺としらすと江ノ電と~』の1シーン

みんな本当に好きなことやって生きていってください! 僕たちも好きなことやっていくんで!(岩井)

 休憩後、再びバンド曲でスタート。ボーカルの前野がセミを擬態する「みんみん」(作・すがわらよしはや/せみいちせみろう)では赤ん坊が大きな泣き声をあげ、“こわい”、“何やってるんだ”と声を出す子も現れる。疾走感のあるロックチューン「ぜんぶにせもの」(作・ささがわはるひ)、二匹の飼い犬の思い出を前野が南こうせつばりに弾き語る「三月三日生まれ」(作・うるみ)、シュールな御伽噺を森山が舞う「おばあさんのながいは」(作・ひらのなな)を堪能すると、ここからは沖縄の子どもたちの個性が炸裂することになる。

 森山のファルセットに合わせて岩井と前野が踊る、銘苅ベースの子どもたち作「ひゃくねんご」。いったいどんな子どもがこんな物語を思いつくのか、と思わされる “未来のスナックで起きた事件”に爆笑の場内。そしてラストはカラオケ大会(本人たち談)と化した、「ふじい天メドレー」。森山のMCによると、沖縄で出会った7歳のふじい天さんは、書いても書いても歌詞が生まれてくるという才能の持ち主だという。歌番組の演出で全9曲のキラーフレーズが続々と披露され、ことのほか似ているヒットソング物真似の数々に場内の興奮度も上がっていく。そして盛大な手拍子が送られるなか舞台上も客席も一体となって大団円を迎えようとしていた……のだが、「なむはむだはむ」は紅白ムードで終わってしまうプロジェクトではない。

 彼らのユニット名「なむはむだはむ」の出典元である「こまごまかってきて のいみ」(作・いとうあきと)の朗読が鳴り響くと舞台上の空気は一転、内容を考察しだす3人。何度も復唱されるうち森山は踊り出し、前野はギターを弾き始める。この内容に“5年間悩まされている”という岩井が言葉を詰まらせたところで、暗転。これが2017年の公演と同じエピローグであることからも、子どもたちの創造力に真っ向から向き合い、その道の手練れがこぞってなんとかしようとするというプロジェクトの本質に原点回帰しているようで胸が熱くなる。

 アンコールに早々に応じると、「呼ばれなくてもやるつもりでしたから」とギターを手にする岩井。パンキッシュな「ほうたい」(作・たにゆうり)で再び会場に興奮の渦を生み出すと、「みんな本当に好きなことやって生きていってください! 僕たちも好きなことやっていくんで!」と岩井がロックスターさながらの熱いメッセージで締め括った。