映画『スラムダンク』『すずめの戸締まり』…中国で日本アニメが躍進する背景は?

3月24日、上海の劇場で開かれた動画共有サイト「bilibili」の映画『すずめの戸締まり』視聴イベント(写真:CFoto/アフロ)

 例えば『すずめの戸締まり』の公開にあたっては、新海誠監督が公開前の3月19日に上海に赴き、自らファンの前で舞台挨拶をした。新海誠監督は、コロナ禍以降初めて国外監督で訪中した有名監督だという。

 また、『THE FIRST SLAM DUNK』も4月15日に北京大学の体育館で先行上映を開いた。体育館のバスケットコートを前に巨大モニターが設置され、約4000人のファンが集まったという。日本で例えるなら東京大学の体育館で海外映画のイベントが開かれることに相当すると考えると、いかに中国国内の人気ぶりが高いかがうかがえるだろう。これらは、中国国内の高いバスケットボール人気にも支えられている。

 いずれのイベントも中国内外に大きく報じられ、作品のプロモーションとして機能した。

 他にも、2つの作品にはある共通点がある。どちらも中国で有名な「聖地巡礼」作品であるという点だ。

 まず、新海誠作品には観光地になっている舞台が数多く存在する。例えば『君の名は。』では、新宿区四谷にある「須賀神社」が舞台となり、コロナ禍前には多くの中国人が訪れる一大観光地となっていた。

 以降、「聖地巡礼」は『天気の子』(2019年)や『すずめの戸締まり』へと続く。『天気の子』では東京都杉並区高円寺にある「気象神社」や、『すずめの戸締まり』では宮城県気仙沼市の「道の駅 大谷海岸」や岩手県山田町の三陸鉄道織笠駅など、実在する場所が多く登場し、中国をはじめ海外のアニメファンが日本を訪れた際の有力な行き先となっている。

 一方の『SLAM DUNK』にも人気となる舞台があり、神奈川県鎌倉市の、江ノ島電鉄鎌倉高校前駅の踏切が人気観光地となっている。これはTVアニメ版『SLAM DUNK』のオープニングに登場することから「聖地」となっており、こちらもコロナ禍前には大勢の中国人観光客が訪れていた。

 ただ、鎌倉高校前駅周辺は住宅街であり、道も狭い場所であることから地域にとっては社会問題となっている。本来観光地ではないところに大勢の観光客が訪れることにより、地域に悪影響を与える「オーバーツーリズム」の代表例になってしまってもいる。

 こうした影響からか、『THE FIRST SLAM DUNK』では江ノ島電鉄も、鎌倉高校前駅の踏切も一切登場しない作りになっている。映画のラストシーンでは江ノ電と思しき踏切の音は聞こえるものの、場所は藤沢市の鵠沼海岸で、4キロメートルほど離れている。それでも映画公開の影響もあり、鎌倉高校前駅の踏切に多くの観光客が訪れている状況だ。

 23年2月以降、中国・日本双方で外国人旅行者の受け入れが大幅に緩和されていることもあり、日本の観光地ではコロナ禍前の中国人をはじめとするインバウンド観光客の姿がすでに戻りつつある。中国でも都市部を中心に旅行需要が戻っており、こうした需要から日本の風景が楽しめるこの2作品への関心が高まっている影響も考えられる。

『すずめの戸締まり』や『THE FIRST SLAM DUNK』以外にも、日本のアニメ作品は中国で好調な成績を収めている。こうした作品が日本に旅行したいきっかけや、日本を訪れた際の観光地選びにつながったりしている点がある。今後、中国での日本アニメ人気が観光にどう影響を及ぼすのかが注目される。

(取材・文:河嶌太郎)

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